栃木県障害者スポーツ協会

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第6回 増渕倫巳さん『あきらめない心』(3/3)

“スポットライト”第6回目は、「車椅子バスケットボール」で『ロンドンパラリンピック』にも出場した増渕倫巳(ますぶち ともみ)さんにお話をお聞きしました。
[聞き手:協会職員(小金沢)]

 

▼今後について

小金沢:増渕さんのこれからということは皆が注目していると思いますが・・・。

増 渕:今は、日本代表の練習とかには行っていません。

小金沢:韓国のキム・ヨナ選手は、『ロンドンオリンピック』を終えてから休養していましたが、『ソチオリンピック』に照準を合わせて復活しました。増渕さんだって分かりませんよ。『ロンドンパラリンピック』を終えて一区切りついたわけですが、あれから2年が経過し、そろそろ始動する時期なのかなと考えてしまうのですが・・・。

増 渕:自分でも難しいくらいに何も決まっていません。イメージは、何個もありますが・・・。

小金沢:質問を変えてみます。今、やりたいことは何ですか。

増 渕:すでに実行に移していますが、水泳をやることです。そして、もう一つは『栃木レイカーズ』のことで、色々な企業から応援してもらいながらバスケットボールをするという環境を作ることです。これも既に『ロンドンパラリンピック』を終えて実行に移しています。未だ実行に移していないもので何かありますかね・・・。

小金沢:「早くインタビューを終わらせて欲しい?」と言わないでくださいね。

増 渕:「ワッハッハ」そんなことはないです。思い出しました。これは、ずっと変わっていません。『全国障害者スポーツ大会』に出場することです。

小金沢:うれしいですね。

増 渕:それが僕の達成できていないことです。僕の目標は3つあって、1つめは『ロンドンパラリンピック』に出場するということで、2つめは『日本選手権』に出場するということで、3つめは『全国障害者スポーツ大会』に出場することです。『全国障害者スポーツ大会』は、もちろん車椅子バスケットボールで出場することですが、個人としてもチャンスがあれば「水泳」でも出場したいと思っています。

小金沢:車椅子バスケットボールで『全国障害者スポーツ大会』に出場するということは、もっと発信してください。

増 渕:結構あちらこちらで話しています。僕は、宇都宮市の愉快市民として任命されているのですが、以前、写真パネル展を開催したことがあるのですが、その写真にも、僕の夢は『ロンドンパラリンピック』でメダルを獲得すること、『全国障害者スポーツ大会』に出場することを書いています。世界一のチームワークで『全国障害者スポーツ大会』を目指すということも書いています。

小金沢:2020年の『東京パラリンピック』はどうですか。

増 渕:その前に『リオデジャネイロパラリンピック』がありますよ。

小金沢:失礼しました。

増 渕:選手として年齢的に見ても可能性は0ではありませんので良いと思いますが、ただ、家の環境とか色々なことを考えてみると、クラブチームと他の団体チームに所属するということは、「結構シンドイ」と感じるところがありまして・・・。僕としては、自分のやりたいことはやらせてもらったと思っていて、今度は、家族のために自分ができることをやってあげたいと思っています。できるだけ一緒の時間をつくりたいと思っています。これまで支えてくださった人のことを考えると次への挑戦も考えますし、自分の道というものをつくって行きたいですが、家族の道もありますので、これからも時間を工夫しながら両立し、次へとつなげたいと考えています。

小金沢:増渕さんがバスケットボールを頑張っていることは、きっと御家族も応援してくれていると思います。それは、一緒になって同じ夢を追いかけることができるということは幸せなことではないのかなと思うのですが、いかがですか。

増 渕:そうですね。でも、妻は大変だったと思います。『ロンドンパラリンピック』の前は、子供が生まれたばかりでしたが、毎月のように海外に試合に行きましたので、妻は大変だと思います。

小金沢:個人的には『リオデジャネイロパラリンピック』、そして『東京パラリンピック』まで頑張って欲しいと思いますが・・。

増 渕:色々な問題がありますので、単純なことではありません。

小金沢:増渕さんは、車椅子バスケットボールでトップチームまで登り詰めましたが、そうなると思っていましたか。

増 渕:思ってなかったですね。どちらかというと困難があっても切り替えて頑張れるタイプではありましたが・・・。皆、目標を持った時というのは、ある程度は頑張るのだと思うのですが、さらにそれ以上となると「覚悟」というものが必要だと思います。その覚悟ができたのは、怪我をしてからの方ができたのかなと思います。時間の使い方が分かってきたということですかね。上達するためにはトレーニングが必要ですが、それでも全て上手く行くというわけではありませんし、辛い時間、じれったい時間というのはあります。でも、それを乗り越えた瞬間から楽しさに変わってくるのだろうと思います。そこを乗り越えられないと、つまらないで終わってしまうわけです。大変なときに、大変だけれど、これは365日続くわけではなくて、例えば1日だけかもしれない。例えば、3時間の練習で、本当に辛いのは意外と20分間だけかもしれない。そこを乗り越えれば成長できるのだからという考え方ができるようになった。そのように取り組めるように変わったから、たぶん、このような結果が出たのかもしれません。だから、取り組み方は、昔に比べれば分かってきたように思います。何かやりたいと思ったときは、可能性はあると信じています。

小金沢:さて、2020年に『東京パラリンピック』が開催されることが決定しました。また、その2年後には本県で『全国障害者スポーツ大会』が開催されることが内定しております。それに併せて、宇都宮市の西川田には、総合スポーツゾーン構想があり、新たに競技場が建設されることになっています。障害者スポーツを取り巻く環境が大きく変わるチャンスですが、近い将来、こうなって欲しいとかというものはありますか。

増 渕:8年後に栃木県で『全国障害者スポーツ大会』が開催されますが、その頃までにはいろいろなスポーツの選択肢があると良いですね。僕の場合は、障害を受ける前にバスケットボールをしていたこともあって、車椅子バスケットボールを選択し、上手くフィットしましたので、他のスポーツを探す必要はありませんでしたが、たぶん当時は少なかったと思います。車椅子のスポーツで浮かぶのは、陸上競技、水泳、車椅子テニス、ボッチャくらいですね。それは、僕が様々な競技大会に出ていったからこそ知り得たものであった。でも、その選択肢を皆が分かった上で選択しているとは思えません。今度、栃木県にも障害者スポーツセンターができますが、車椅子バスケットボールの他にもスポーツができるスペースがあれば良いと思います。車椅子バスケットボールは、体育館に行けば見ることはできると思うのですが、車椅子テニスをしているのを見たことがないです。あとは、そのスポーツをどこに行けばできるのかが分からないこともあると思います。そこに行けば様々なスポーツができるということになれば良いと思います。そして、自分には何が合うのかといことが選択できるのが良いと思います。そのような状況ができていれば、『全国障害者スポーツ大会』でも上位でメダルを獲得できる人が増えると思います。いきなり僕らの練習を見たら、厳しくて嫌になってしまうと思います。そこで他の選択肢があると良いと思います。

小金沢:最後に一言。増渕さんにとって車椅子バスケットボールとは・・・。

増 渕:自分を作り上げているものの一つではあります。このことは、よく聞かれるのですが、一言で答えるのは難しいですね。一言では、人生ですかね。自分を成長させてくれるための手段ですかね。このことから色々なことを学んで、成長していると思います。車椅子バスケットボールをすることで、色々な人に会って、色々なことを考えさせられて、自分を成長させてくれていると思います。

小金沢:『パラリンピック』を目指そうとしている人へ向けてメッセージをお願いできますか。

増 渕:『パラリンピック』には1回しか出場していませんが、大きな舞台であって、皆が目指す舞台でありますが、出たから凄いというわけではないと思います。出なくたって一生懸命に努力して凄い人はいますし、そのことで全てが決まるわけではないと思います。ただ、『パラリンピック』は、皆が目指す大きな舞台であって、そこでしか味わうことができないものがある。それを味わうことは、良い経験になるので、是非、頑張って欲しいと思います。一つの目標に向かって進むことは、結果はどうであれ、自分に返ってくるものは大きいと思いますので、それを信じて頑張って欲しいです。人間としても成長できる、進化できると思います。

小金沢:ありがとうございました。聞きたいことは全て聞けましたが、障害者スポーツを離れた部分でいくつか聞きたいことがあります。増渕さんをアイドルのように思っている人がいるかもしれませんので、車椅子バスケットボール以外のことを教えていただきたいのですが・・・。

増 渕:そんな人いませんよ。

小金沢:余暇の時間というのはありますか。

増 渕:余暇なんてありませんよ。これは任務かもしれませんが、子供と遊んでいますね。僕が、リラックスする時間というのは、「料理」をしているときです。上手い料理を作って、上手いお酒、特にワインを楽しむことですね。

小金沢:最後にもう一つ。全国で俺より凄いなと思う人はいますか。

増 渕:バスケットボール選手では、上手いと思ったのは宮城の「藤井選手」ですね。メンタリティとか考え方で一番、最初に刺激を受けたのは「京谷選手」ですね。

小金沢:外に出ないと分からなかったですね。

増 渕:でも、うちの『レイカーズ』でも、三村選手のリーダーシップ、二階堂選手のスピードとか、それぞれの個性があって、皆、素晴らしいと思える部分はあります。

小金沢:『レイカーズ』に期待したいですね。

増 渕:期待してください。

小金沢:今日は、長時間ありがとうございました。

 

<増渕倫巳(ますぶち ともみ)さんのプロフィール>

生年月日:1977年2月12日(年齢37歳)
住所:宇都宮市
職業:公務員
障害名:両下肢の機能の著しい障害
趣味:料理、アウトドア、 スポーツ観戦(サッカー日本代表の試合は欠かさない)※サッカー日本代表では本田選手、長友選手のファン
家族構成:祖母、父母、妻、娘
競技歴:10年
好きな言葉:初心忘れるべからず(世阿弥の言葉)、有言実行
愛読書: 置かれた場所で咲きなさい(渡辺和子:著)
よく聞く歌:THE BLUE HEARTS、LM.C
好きなタレント:堀北真希
主な成績:
2006年 フェスピック競技大会
2008年 日本選抜車椅子バスケットボール大会 優勝
2010年 車椅子バスケットボール世界選手権大会 10位
2010年 広州アジアパラリンピック
2012年 ロンドンパラリンピック
2013年 日本車椅子バスケットボール選手権大会 優勝