栃木県障害者スポーツ協会

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第4回 金田典子さん『シッティングバレーボールで世界に挑む!』(2/2)

 “スポットライト”第4回目は、「シッティングバレーボール」日本代表女子チームで活躍中の金田典子さん(日光市在住)に登場していただきました。[聞き手:小金沢(栃木県障害者スポーツ協会職員)]

 

▼シッティングバレーボールの面白さ

小金沢:話は変わりますが、シッティングバレーボールを始めて、障害を受ける前に自分がやってきたバレーボールとの違いは感じましたか。
これまで全ての年代でトップでプレーしてきた金田さんの技術を考えれば、シッティングバレーボールも簡単にできたのではないかと想像するのですが・・・。

金 田:いえ。全く別物と感じました。始めは、「シッティングバレーボールは、ネットが低い、コートが狭い、座ってするバレーボール」という認識だったのです。けれども、障害を受けてから15年ぶりということもあったのですが、最初は、ボールの重さが砲丸のように感じましたし、「足で動けない人間て、こんなに大変なんだ」と感じました。
バレーボールは、身長180cm越えている選手が沢山いるなかで、さらにジャンプをして、すごい高さからボールがきていたわけですが、今は、座った状態で腕を伸ばした高さからボールがくるので、すごく近い位置からボールが飛んでくる感覚でした。勝負が空間でない感覚です。

小金沢:すごい狭いところでプレーしている感覚になるのですね。

金 田:普通、バレーボールは、チャンスボールがくると、先ず丁寧にセッターにボールを返して、セッターが良いトスをあげて、アタッカーが打つわけです。これが、バレーボールのセオリーですが、シッティングバレーボールは、自分のコートに長い時間ボールを置いておくわけではなく、返せるときに返してしまうという戦い方です。外国は背が高いので、すぐに返してきます。

小金沢:サーブをあげてからの勝負が早く決まることが多いのですね。

金 田:はい。特に「オランダ」は、そのような展開が多いですが、それを打ち破ったのは「中国」です。普通のバレーボールのような戦い方をしています。
「日本」は、どちらかと言うと「オランダ」に近いかもしれません。

 

▼栃木サンダースの活動について

小金沢:2010年度に「日本シッティングバレーボール協会」に登録しているチームを調べたところ、男子が21チーム、女子が11チームありました。本県にも、『栃木サンダース』というチームがありますが、活動について紹介してください。

金 田:健常者、障害者、その家族を含めると20名程度です。

小金沢:“シッティングバレーボール”は、国内の大会では健常者も一緒にプレーしていますが、実際にやってみたいという人は、いつ、どこに行けば参加できるのでしょうか?

金 田:クラブの練習は、栃木市の大平西小学校で水曜日の夜7時30分から行なっていますが、選手が集まらないと休みになったりもします。『栃木サンダース』のホームページがありますので、問合せして来ていただきたいです。メンバーを募集していますから、どんどん増えて欲しいです。

 

▼障害者スポーツ振興について

小金沢:金田さんは、「バレーボール」と「シッティングバレーボール」の両方で日本代表として戦った経験があります。そんなキャリアをお持ちの方は少ないと思いますので、是非とも伺いたい話なのですが、近年、日本の障害者スポーツは、競技人口や競技種目も増加し、技術面でも大変飛躍していると思います。『パラリンピック』も『オリンピック』同様に注目されてきています。「スポーツ基本法」の制定で、トップ選手の練習環境も整備されてくるなど障害者スポーツを取り巻く環境が大きく変わってくるかもしれません。今後の障害者スポーツの振興については、どのようなことが必要であると感じますか。

金 田:未だ、日本国民には、『パラリンピック』や『デフリンピック』『スペシャルオリンピック』のことが、十分認知されていないのが実情だと思います。多くの方に知って欲しいと思います。また、近年は、『オリンピック』の直後に『パラリンピック』が開かれますが、日本のスポーツ行政は、『オリンピック』は「文科省」、『パラリンピック』は「厚労省」と複数の省にまたがることによる問題が指摘されています。これが一元化されることを期待したいです。

 小金沢:一元化されることにより、トップ選手の練習環境の整備や競技普及、活動資金の面でも期待できます。ところで、栃木県では、平成23年2月に「新とちぎ元気プラン」を策定し、中長期的な展望として、今後5年間(2011~2015)に県が行う仕事の進め方等の基本指針をまとめました。その取組の方向として、「障害者がスポーツしやすい環境づくり」を進めるとありますが、どのようなことが必要であると感じますか。

金 田:障害者スポーツセンターを建てて欲しいです。

小金沢:その他にありますか。 

金 田:やはり、“障害者スポーツ”を知って欲しい。先程の学校等に訪問する話をしましたが、「うちにいる子供はスポーツはできるレベルではない」と判断されていることがあります。「うちの子供は重症なのでパラリンピックなんて考えられない」と話を聞きます。学校や施設等の職員に『パラリンピック』の競技を知っていますかと訪ねると分かりませんという回答が殆どです。がっかりします。 『パラリンピック』を目指している障害者スポーツの環境が、『オリンピック』の人達と比べると十分でないけれど頑張っているということを関係者の方には知って欲しいし、応援して欲しい。
私は、「ジャパン」イコール何でも国でやってくれるというイメージを持っていたのですが、まさか『パラリンピック』に出場するにあたって、こんなにも多く自己負担があるとは考えもしなかったです。
これまでの“バレーボール”の環境で普通だと感じていたことが良すぎたのだと感じます。テレビ中継にしても取り扱う量が違うし、新聞についても同様に感じます。少しでも『オリンピック』に近づいて欲しいと感じます。

 

▼パラリンピック(ロンドン大会)への意気込み

小金沢:唐突ですが、自身にとってスポーツとは・・・。

金 田:夢、生きがい、仲間づくり、楽しい生活を送れるものだし、自分の知らない世界を見ることができるなど良いところは沢山あります。

小金沢:マイナスの面はありませんね。

金 田:金銭面!私は、お金がかかって困っています。(ワッハハ・・・)

小金沢:現在、スポーツ活動をされている障害者の中には、金田さんのように日本代表として「パラリンピック」に出場と思っている方も多いと思います。何かメッセージをお願いします。

金 田:『パラリンピック』は、メダルを獲るという目標もありますが、多くの国のことを知ることができる機会であるとも感じます。 『パラリンピック』などの国際大会では、沢山の国の人、色々な競技の人と知り合うことができます。視野が広がります。

小金沢:異文化との交流ですか。スポーツの良さですね。

金 田:本当に素晴らしいことです。多くの人達に体験して欲しいです。自分には『パラリンピック』は雲の上の存在だと思った瞬間から逃げて行きます。私のような「おばさん」が出場しているのだから自分も行けると思って頑張って欲しいです。

小金沢:最後にもう1つ。日本女子チームは既に『パラリンピック(ロンドン大会)』の出場権を獲得しています。当然、アジア1位の「中国」も出場しますが、改めて目標をお聞かせください。

金 田:「中国」には負け続けているので、この次は勝ちたいですね。「中国」に勝って金メダルを獲りたいです。

小金沢:ズバリ勝算は?

金 田:厳しいですが、頑張ります。

小金沢:今日は、ありがとうございました。頑張ってください。

 

<金田典子(かねだ のりこ)さんのプロフィール>

1964年2月21日生まれ。47歳
現住所:栃木県日光市
出身地:徳島県鳴門市
障害:一下肢機能全廃(左)一下肢の膝関節の著しい機能障害(右)(下肢装具使用、手動車椅子)
趣味:シッティングバレーボール
家族構成:夫、長男
競技歴:9年
成績:
2002年10月 世界選手権 6位 ~スロベニア・リュブリャナ
2008年9月 パラリンピック 8位 ~中国・北京
2010年7月 世界選手権 9位 ~アメリカ・オクラホマ州
2010年12月 広州アジアパラリンピック 2位 ~中国・広州
2011年11月 アジアチャンピオンシップ 3位 ~中国・北京