“スポットライト”第7回目は、『インチョン2014アジアパラ競技大会』アーチェリー競技の日本代表選手として出場した大塚忠胤(おおつか ただつぐ)さんにお話を伺いました。
▼伝えたいこと
小金沢:当協会のホームページでは、障害者スポーツキャラバン活動の講師として大塚さんを紹介しています。紹介のページには「エピソード、伝えたいこと」を書いていただきましたが、大塚さんは「人間には限界は無いこと」、「一人でアメリカの試合に出場して、弓を通して交流したこと」、「何か始めたいときに、はじめの一歩を踏み出す勇気」と書いてくださいました。大塚さんには、これらのことをお聞きしたいのですが、最初は「一人でアメリカの試合に出場して、弓を通じて交流したこと」についてお聞きかせてください。 大変なことだったと思いますが、どうしてまた、一人でアメリカの試合に出場しようと思ったのですか。
大 塚:3Ⅾという距離表示がある動物的を撃つ種目がありますが、面白いという話を聞いてカリフォルニア州のレディングで行われる競技会に出場しました。ゴールデンウイークでしたので何人かを誘いましたが、結局行く人がいなくて、ひとりで行くことになってしまったのです。
小金沢:たくさんの種目があるのですね。
大 塚:日本国内で紹介されている種目以外にも沢山あります。
小金沢:大塚さんも経験したことのない種目があるのですか?
大 塚:はい。たくさんありますよ。「ファンショット」という的が上空に飛んでくる種目もありますし、飛んだ距離を競う種目もあります。日本じゃできないと思います。500mくらいは飛ぶらしいです。
小金沢:面白そうですね。
大 塚:「スキー・アーチェリー」という種目もあります。
小金沢:「クロスカントリースキー」みたいなものですか。持久力が必要ですよね。
大 塚:長野県の木島平というところが有名ですね。私は「スキー・アーチェリー」の経験はありません。その種目の場合、夏の間のトレーニングは、ひたすら走るようです。
小金沢:大塚さんは、アーチェリーのトレーニングとして走ることはありますか。
大 塚:走るというよりは、歩きます。持久力をつけなければなりませんので、結構な距離を歩きます。日ごろ、山の中を歩く「フィールド・アーチェリー」という種目をしているので鍛えることができます。
小金沢:足腰は強いですよね。
大 塚:夏場の大会に出ると半ズボンでいますので、人から「うらやましいよな。その太もも。」とよく言われます。見てみますか?
小金沢:本当ですね。自転車競技選手とか、スピードスケート選手のようですね。アーチェリー選手は皆、そのような太ももをしているのですか。
大 塚:違います。
小金沢:次に「何か始めたいときに、はじめの一歩を踏み出す勇気」についてお聞かせください。障害があるなしに関わらず、何かを始めようというときには、はじめの一歩を踏む出すときは相当な勇気がいるものです。このことについて、何か経験談がありそうですが、お聞かせいただけますか。
大 塚:「レディング」に行ったことです。英会話ができたわけでもありませんので、アメリカの行った先で、自分で車を運転して競技会場まで行ったことです。そのときは、飛行機の乗り継ぎで荷物が遅れてしまい、大変な思いをしました。
小金沢:アーチェリーを始める時の一歩というのは勇気がいりましたか。
大 塚:それはあまり感じませんでした。アメリカの試合に行くときの方は勇気がいりましたね。
小金沢:大塚さんは、元からそのような性格だったのですか。それともアーチェリーを始めてから変わってきたのですか。
大 塚:かなりありますね。何かを吸収しようという意識は強くなりました。
小金沢:大塚さんを見ていると、「パラリンピック」を目指しているせいか、自分に厳しく取り組んでいる方だなと感じます。
大 塚:昨年7月から『レンタルのニッケン』という会社でお世話になっています。今度は「レンタルのニッケン」でアーチェリーをさせていただいているので、さらに自分を正さなくてはならないと感じて競技をしています。
小金沢:『アーチェリー協会』や『レンタルのニッケン』の看板を背負うということで、大変なプレッシャーだと思います。
大 塚:はい。その環境を乗り越えて、楽しめるくらいにならないといけないと思います。
小金沢:最後に「人間には限界が無いこと」についてお聞かせください。障害のある大塚さんが言うと重みのある言葉だと思います。大塚さんは、口を使って弓を引いてアーチェリーをされているわけで、その言葉通りだと思います。
大 塚:何でも取りあえずやってみる。それが始めの一歩ですよね。そして、今度はその精度を高めていくことになると思います。私の身体は24時間ずっとしびれがありますが、弓を撃つ瞬間の20秒というのは、その痛みを忘れられるのです。
小金沢:アーチェリーを行う際、身体にしびれがあって、狙いを定めるということは難しいことだと思いますが・・・。
大 塚:それだけ競技の際は集中します。
小金沢:まさに限界を超えている感じですね。ありえないことが起こっているわけですから。
大 塚:だから楽しいのです。痛みを忘れられるからアーチェリーをやっているわけです。でも、それはアーチェリーに限ったことではないと思います。
小金沢:スポーツの力という言葉をよく耳にしますが、大塚さんの話を聞くとそのことを強く感じます。人間の可能性というものを感じます。
大 塚:僕が怪我をしたときに思ったことは、「犬や猫だって足が1本無くても頑張って生きている。しかも守られずに生きている。人間の俺が負けてどうするの。」と思いました。
▼今後の目標について
小金沢:最後に今後に向けての目標を聞かせてください。
大 塚;まず『リオデジャネイロ・パラリンピック』に出たいですね。そして『東京パラリンピック』にも出たいと思っています。それから、私が頑張ることで「アーチェリー場を作りたい。」という目標があります。できれば、私の地元に「障害者も健常者もできるアーチェリー場を作りたい。」と思っています。
小金沢:2022年に『国体』と『全国障害者スポーツ大会』を控え、アーチェリー場は何とかして欲しいですね。
大 塚:大会に合わせて作られるような仮設でしたらどこにでもできるのですが、それでは駄目だと思います。やはり日ごろ練習する場所がなければ選手も育たないからです。私は、公共のアーチェリー場ができるためには、先ず自分が頑張って結果を残さなければと思っています。
小金沢:一人では大変ですよ。
大 塚:一人ではありません。今日、また応援しくれる人が増えましたから・・・。
小金沢:応援しています。頑張りましょう。
<大塚忠胤(おおつか ただつぐ)さんのプロフィール>
生年月日:1968年3月22日
住所:足利市
職業:株式会社レンタルのニッケン
障害名:肢体不自由(一上肢の機能を全廃)
趣味:オートバイ、モータースポーツ観戦(テレビ観戦)
家族構成:妻、子ども3人(男の子、女の子、女の子)
競技歴:11年
好きな言葉:おもしろき事なきこの世をおもしろく(高杉晋作)
愛読書:竜馬がゆく、深夜特急
好きな歌:Don‘t Stop Me Now(Queen)
好きなタレント:タモリ
主な成績:
2009年 全日本障害者室内選手権CP男子 優勝
2010年 全日本障害者室内選手権CP男子 優勝
2010年 ジャパンパラリンピックCP男子オープンの部 優勝
2011年 厚生労働大臣杯全日本障害者アーチェリー大会CP男子オープンの部 優勝
2011年 ジャパンパラリンピックCP男子オープンの部・3位
2011年 APC Archery Cup Championship タイ・バンコク 8位
2011年 全日本社会人フィールドアーチェリー選手権 4位 ※健常者の大会
2012年 NFAAワールドアーチェリーフェスティバルin VEGASFLXクラス 優勝
2012年 全日本フィールドアーチェリー選手権 10位 ※健常者の大会
2013年 全日本社会人フィールドアーチェリー選手権 10位 ※健常者の大会
2013年 NFAAワールドアーチェリーフェスティバルin VEGASチャンピョンシップLXクラス 3位
2013年 全日本フィールドアーチェリー選手権 10位 ※健常者の大会
2013年 厚生労働大臣杯全日本障害者アーチェリー大会CP男子オープンの部 フェニックス杯 3位
2013年 NFAAワールドアーチェリーフェスティバルin VEGASFLXクラス2位
2014年 全日本フィールドアーチェリー選手権 16位 ※健常者の大会
2014年 全日本社会人フィールドアーチェリー選手権 6位 ※健常者の大会
2014年 インチョン2014アジアパラ競技大会 CP-OPEN MENベスト8
2014年 第14回全国障害者スポーツ大会長崎がんばらんば大会2014 クラス2位